2009.06.11 09:00:00

Vol.4 新聞問題! (押し紙とか広告の話)

小: 先日、米国のサイトで面白い意見を見かけました。新聞がネットに進出した時点で...

小: 先日、米国のサイトで面白い意見を見かけました。新聞がネットに進出した時点で、「読者」じゃなくて「ユーザー」を欲したという話。そして、多くの読者はユーザーとなっただけ。
新聞の危機は読者をネットユーザーに転化させ、拡散させてしまったから。

橘: 新聞というのは、もともと読者から金を取って売るメディアだったわけだよ。それが戦後の大量消費社会を迎えて、大衆広告の時代になって、購読料の売上げより広告収入の方が多くなった。
その辺から新聞社の方向性が変わってきてしまった。本来は、良い原稿を書いて、読者に買ってもらうのが新聞社の目的だったのだが、広告主体になると、部数をたくさん増やして広告効果を高めることが目的になってしまった。

現在の新聞の危機は、広告価値が紙からネットに移動しつつあるということだね。

小: 企業からしてみれば新聞広告へのROI(投資効果)は低くなりつつありますね。ネットのようにコンバージョンが出ない。さらに広告を打ったからといって翌日の売上げに響かなくなったという声をよく聞きます。

今後は心理マーケティングとして、「あそこに広告を載せているから一流企業」みたいな見せ方をして、モノを売ったり販社のトークに使いたい新興宗教や通販マーケティングの出稿ばかりになるのかな。現にそうだけど。

橘: 新聞の一面下は、出版社の広告が並ぶけど、あれの効果が驚くほど落ちたと言われているね。

まぁ、読者向けというより書店向けに広告を入れているようなところがあったけれど、新聞の書籍広告というのは、新聞の伝統的な広告活用だったから、それの意味が空洞化しているというのは、大変なことだよ。

小: でも、本当に効果あるとは思えないんですよ。昔...といっても90年代ですが、雑誌の広告を打ちましたが、当時ですら効いていたかどうか、わからなかったなぁ。

それを代理店の友人に言ったら、「そりゃお前、あの広告は読者に向けてじゃないよ。企業の宣伝部が読んでるから、ちゃんとやってますよって告知広告なの! 代理店の身にもなれ」と言われて「そうなのかぁ...。ならやっぱ、そんなことのために無駄金払えん」と思った(笑)。

橘: 昔は新聞紙って、弁当箱包んだり、薪のたきつけに使ったり、いろいろと便利だったのだが、今では、ゴミになるのが嫌で宅配やめる人が多いんだろう。

小: 薪って(笑)。検便のときに敷いたりしていませんでした?


押し紙とボット問題を斬る


橘: 週刊新潮が「押し紙を斬る」という短期連載をはじめたね。

押し紙 /「ノルマ達成と押し紙」の項を参照

これは出版社も同じだけど、なんで発行部数を大きく見せたがるかというと、広告料金に関連してくるからだな。もともと広告というのは「ビラ」なんだな。

ビラが本誌・本紙に組み込まれたのが広告のスタート。だから、ビラを何枚まいたかで広告料金が決まってきた。しかし、こうしたリーチの数量を誇示しあうのは、 情報が不完全だった時代の遺跡なわけだ。

ネットが本格的になったら、もうリーチの数なんか意味なくなる。僕は、新聞の広告も、本格的にアフリエイトの考え方を導入すべきでないかと思うのだが。

小: ああ、それはいいですね。米国の地方新聞社は記事を共有したりして、記事作成のコストを圧縮しつつ、そこに広告を挿入してレベニューシェア(利益分配)しているという記事を読みました。ちなみに押し紙問題は、むかし「噂の眞相」(月刊誌/現在休刊が写真入りで廃棄新聞の実態を報じていましたね。

橘: 媒体のレスポンス率は、CPR(コストパーレスポンス)と、CPO(コストパーオーダー)が使われるが、通販の連中は、この辺の数字を極め尽くしているか ら、どんな媒体が、どのくらい実際にリーチしているか分かるという。新聞社や出版社の媒体資料なんか、最初から信用していない(笑)。

小: うん。ダイレクト通販系企業はとにかくマーケティング面での蓄積が凄いですよね。版元が前近代的なマーケティングやっているなか、広告主にとって効果的な提案というのはどんどん乖離していると思います。

ある大手媒体社の営業の友人が、企画営業ができない同僚たちに立腹していて、「80年代じゃないんだから、肝臓じゃなくて、脳で仕事をしろ」って怒っている(笑)。

橘: しかし、ネットのレーティングも、古い業界の残滓(ざんし)がありそうだな。ゲタはかせているところが多いんだろう。PVなんて、カウントの仕方で大きく揺れるんだろ?

ボットなんか、客じゃないんだからカウントすべきではない。Googleボットは押紙である。なんちゃって。

小: ボットにはRSSリーダーとかも含まれますからね。今後、ますますフィード(配信)のシンジケーションが多岐にわたり、マイクロブログが流行るほど、人間が読んでいない可能性が高くなるでしょう(笑)。

ゆえにコンバージョン・レートを指標とするなど、ロイヤリティの高いユーザーを囲った専門的なサイトのほうが広告価値は高いですよ。

出稿企業のサービスや消費に依りますが、数百万部出ていても可処分所得の多い層が読んでいるとは限らない『少年ジャンプ』の表4広告と、数百万円以上の車と時計の話で埋め尽くされている『ENGINE』の表4では、当然ながら価値が違う。

どちらがいいとかではなく、PV数至上主義は営業トークができない兄ちゃんたちにはいいのですが、媒体のブランド力はコミュニティに宿るわけですから、それを反映できない。

だから、猿のように数だけを求めることは業界全体にとって自ら首を絞めることです。頼む、やめてくれ(笑)!
2009.06.11 09:00:00 | Words by: Yukio Kitsukawa, Hiroto Kobayashi

Comment

コメントは承認制となっております。編集部が確認および承認した後に、サイトへ反映されることになるので、多少時間がかかってしまうことがあります。
また、公序良俗に反する内容、個人や団体を誹謗中傷する内容、その他不適切と判断させていただいた内容については、否認または削除させていただく場合もございます。ご了承ください。
Only japanese available.

Trackback

このエントリーのトラックバック

Reviewer メディア問題

橘川 幸夫  Yukio Kitsukawa

橘川 幸夫  Yukio Kitsukawa

72年、渋谷陽一と雑誌「ロッキングオン」創刊。全面投稿雑誌「ポンプ」ほか、数々のメディアを創刊。 CGMの草分けでもあり、いまも現役。現在、オンデマンド出版社「オンブック」社長、株式会社デジタルメディア研究所の所長を務める。仔細はこちら。


小林 弘人  Hiroto Kobayashi

小林 弘人  Hiroto Kobayashi

94年、雑誌「ワイアード」創刊。雑誌「サイゾー」からブログメディアの「ギズモード・ジャパン」まで数多くのメディアを創刊。眞鍋かをりのブログ出版ほか、IT業界の仕掛人として知られる。ウェブメディアの草分けでもあり、いまも現役。現在、株式会社インフォバーン代表。近著に『新世紀メディア論 新聞・雑誌が死ぬ前に』。仔細はこちら。