インターネットが登場して、いちばん被害を受けたのは、雑誌(とくに情報誌)と新聞だと思う。これらの特技は即時性だから、ネットにかなうわけがない。「紙やめちゃう」のが良いのだろうけど、そうもいかないんだな。
昨今の現象はですね、メディア論を語っても、結局、産業論に言及せざるをえなくなって、最後には経営コンサルみたいになってしまう(笑)。これはつまり、前提である社会の仕組みそのものが雪崩を起こしていることに紐づきます。
橘: 新聞というビジネスは、装置産業なんだ。各地域の特派員もそうだが、自社で輪転機をかかえて印刷工員もいれば、独自の系列の販売店というネットワークがある。紙をやめちゃうと、そうした人たちが食えなくなるからな。
今の新聞社の苦しみは、単なるメディアのシフトだけではなくて、装置構造をどう次世代にソフトランディングさせるかということだと思う。
小: それは家電メーカーがネットで独自販売をしようとしたときにも苦悩していたところですね。自分たちが出資してつくった小売りなのに、自分が直販していいのか?というジレンマ。結局、皆やりましたが(笑)。
そういう産業装置は新聞だけではないと思いますが、産業って規制強化や緩和、あるいは消費スタイルの変化によって、常に変化を強いられ安泰なことなんてないと思うのですが。問題は常に安泰と思って未来への投資や経営改革を怠ってきたというツケのほうが大きいでしょう。
橘: そうだね。ナショナルショップとかソニーショップというのが家電の拡大に大きな推進力になったが、家電量販店が出来て、一気に意味を失った。新聞にとってインターネットというのは、家電量販店みたいなものなのかもしれないな。
小: 家電量販店ね。でも、新聞の場合にはタダでバラまいたのが自分たちというところが違うんじゃない?
橘: いや、ただ言ってみただけ。
小: ...橘川さん、疲れてます(笑)? また倒れちゃダメだよ。
新聞を殺したのはネットなの?橘: 独自の販売店ネットが弱い日経新聞は、朝日系列の販売店や読売新聞の系列に間借りしているところが多い。だから逆に、身軽なだけ、デジタル化にいちばん熱心になれるのだと思うね。
小: なるほど。でもそんな日経新聞がネット専業で食えるかといえば、かなり難しいと思います。
これは明白すぎることですが、要はいまの規模を維持していくには、
特に大新聞の場合、ネットだけの収入では英語圏すべての読者をもつアメリカですら無理なんですよ。大手出版社も同様ですね。PV数頼みの広告集稿モデルだけでは、失った購読料までカバーできません。
橘: インターネットって、貧乏会社も大企業も同じレベルで参入できるから、大企業の人たちは大変だよ。メーカーなんか、それまで100億、1000億単位のビジネスやっていたのに、インターネットはじめたら月商100万円とかいう数字が出て、経営陣はキョトンとしたり(笑)。
半導体の工場じゃないんだから、先行投資の金額で勝負が決まるわけではない。ネットは投資が少なくて済むというのが最大のメ
リットだから、金かけないで、いろんな実験をやって、うまくいったものだけ残せば良い。古い企業がやると、投資競争みたいなことやって、結局、同じようなものを作ってしまうんだな(笑)。
小: 投資したぶんだけ見返りが出ると考えがちですよね。でも、ベンチャーキャピタルがネット企業に出資する理由は、低コストのままうまくいったら最大の利益を生むから。つまり、労働集約型じゃない。
なのに、高コストであればネット・ビジネスの意味がなくな
る。そんな基本的なことを出版社は理解しているのかどうか...。先日、某ビジネスサイトの編集長から聞いた言葉で印象的なものがあります。その方も誰かから
聞いたらしいのですが、「
新聞を殺したのはネットじゃなくて、CNBCだ」って。
CNBCCNBCってのはアメリカの経済ニュースをリアルタイムで放映するCATV局ですが、デイトレーダーは皆これを観ながら売り買いするのだとか。
CNBCが徹底しているのは市況が動きそうな出来事があると、すぐにスタジオに呼ぶか中継車を出して放送するそうですが、これはもはや活字はタイムラグがあり過ぎて追いつけない。つまり、メディアのフォーマットを決めて
しまったわけですね。
ネットに剽窃されているという意見がありますが、もはや、翌日に前日の市況を読んでトレードする人たちはお年寄りくらいじゃないでしょうか? そのような時代のニーズに印刷メディアのフォーマットが適合していないのだから、メディア企業が第一義にやるべきことはフォーマットの再構築なんですけれど、なぜか印刷にこだわる...。それは装置産業だから、ということなんですよね。
橘: ニュースはモノではないからな。印刷物はモノ。僕は、本というのは、時間を超えていくものだと思ってる。50年前の本が神保町に行けばたくさん残ってる。ネットの情報なんて、数年したら消える
ぜ。
このサイトも、リアルテイムだから意味あるので、もうすこし長いスパンで残そうとしたら、本にして図書館に置いたほうが良い。ここで深呼吸。「本は時間を超え、ネットは空間を超える」。
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