2009.06.03 09:00:00

Vol. 2 通信と放送の融合とか (4)

橘: ところで、電通というのは凄い会社だと思ったんだけれど、ちょっと前に電通のC...

橘: ところで、電通というのは凄い会社だと思ったんだけれど、ちょっと前に電通のCSRとして「広告小学校」という教育メソッドを作ったんだ。「広告というのは誇張されている」ということを理解してもらうための、広告リテラシー普及のためのメソッド。

小: 具体的にはどんな教育?
橘: 実際のアフラックのテレビCMを使って、音響でどう演出しているか、シナリオがどのように作られているかを、小学生向けに教える教材。広告作る側も、広告は誇張されている、ということを理解してもらってないと、広告表現ができなくなる(笑)。

今のテレビ視聴者をみていると、テレビの言ってることはすべて正しいと思って、オウム返しに反応する人が多くてイヤになる。イギリスには、もっと過激な子ども向け広告リテラシーのメソッドがあって、それは、「広告にだまされるな」というものらしい(笑)。

小: まあ、事象の一側面だけを強調するわけですから、そもそもが谷間寄せブラとか、シークレットブーツみたいなもんですよ(笑)。

ただ、そこに「癒し」や「カタルシス」を付与する作家性があると面白いんだけど、最近は芸を見せてくれるものが減りましたねえ。って、なんだか「広告批評」みたいですよ、この対談(笑)。

橘: 「メディア批評」だからしょうがないじゃないかな。ところで、通信と放送の融合って、システム的なことではなくて、実はとっくの昔から起きていたことなんだ。

たとえば60年代のラジオの深夜放送は、リクエスト葉書(通信)をディスクジョッキーが読む(放送)ということで融合していた。参加型メディアの本質というのは、通信と放送の融合なんだよ。

小: ふうむ、通信と放送の融合って技術の進歩によってプロトコル(通信手順)が融合して、じゃあ、どうしますかって話ですが、それじゃあ通販しましょう、となりがち(笑)。もともと電話リクエストとかって、通信と放送の融合というか、通信と放送のリレーですね。

橘: 数年前、テレビの全番組を一度ハードディスクにためこんで、それを独自の検索エンジンで探し出して見る、というサービスをはじめた人がいたんだ。

それで意見を聞きたいというから行ったんだよ。このビジネスの面白いところは、ハードディスクにためこむのは個人の仕業。

その会社は、検索エンジンを提供するということ。今のテレビガイドって、放送予告なんだな。番組は緊急に組み替えたり、野球中継が伸びて変更になるとか、かなり変更が多いんだ。テレビカイドと同じようには放送されていない。そこで人海戦術使って、毎日テレビの放送記録をデータにした、正式な実施番組表を作った。

小: それは、「何時何分に温泉で殺人事件が起きて、女刑事役の片平なぎさが登場」といったログも含めてですね。

橘: そう。それで、そこの社長が言うには「僕はテレビ番組って、最初、バカにしてましたが、いろいろ見ていると、実に有益な情報がたくさんある。あとで検索して見ても、充分に楽しめる」というんだな。

それで僕は反論したわけ。「いや、そうではないんです。テレビ番組が最近内容的に充実したのは、制作側がインターネットで情報収集するようになったからなんです。テレビで放送している元データは、だいたいネットにあるから、知りたい人はネットだけで充分だと思います」と。

インターネットを使ってクイズ番組のネタを集めるのは「通信」であり、それを番組として「放送」してるわけだ。これが放送と通信の融合なんだと思う。

小: ふむ、ふむ。そして、今では放映されたものについて、またネットで感想やらなにやら共有されているわけですから、実は放映前から放映後まですでに融合していますね。それをデバイスが分断しているだけなんだけど、実は視聴者の行為はシームレス(つなぎ目がない)。

橘: テレビは、現状でもかなりの部分が視聴者参加番組化している。だけど、相変わらず権力構造は、局と少数の有名タレントが握っている。今のタレントは、素人をイジクルことができるかどうかが成功の条件で、本人の才能は二の次。

なのに、参加した素人には薄謝で、いじくったタレントに高額なギャラが配分されるというのは変。テレビがCGM化するためには、放送局が巨大な通信の交換機みたいな設備になって、番組を集めて配信するという仕組みが必要だろう。

小: IP-TVが普及したら、放送局の設備は要りませんよね。だから、それらを集約するアグリゲーション装置としてサービスを提供するというのはアリです。うーむ、それって放送のハナシだけじゃないぞ。

橘: デジタル化の流れのなかで、昔、何億もかかった放送機材が、今では100万円で手に入ってしまう。設備産業だったテレビ局のビジネスが大きく変わろうとしているので、一人ひとりの逆流の流れをテレビの世界に持ち込めたら面白いと思う。ニコ生は、そういう意味でも注目しているんだ。
2009.06.03 09:00:00 | Words by: Yukio Kitsukawa, Hiroto Kobayashi

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Reviewer メディア問題

橘川 幸夫  Yukio Kitsukawa

橘川 幸夫  Yukio Kitsukawa

72年、渋谷陽一と雑誌「ロッキングオン」創刊。全面投稿雑誌「ポンプ」ほか、数々のメディアを創刊。 CGMの草分けでもあり、いまも現役。現在、オンデマンド出版社「オンブック」社長、株式会社デジタルメディア研究所の所長を務める。仔細はこちら。


小林 弘人  Hiroto Kobayashi

小林 弘人  Hiroto Kobayashi

94年、雑誌「ワイアード」創刊。雑誌「サイゾー」からブログメディアの「ギズモード・ジャパン」まで数多くのメディアを創刊。眞鍋かをりのブログ出版ほか、IT業界の仕掛人として知られる。ウェブメディアの草分けでもあり、いまも現役。現在、株式会社インフォバーン代表。近著に『新世紀メディア論 新聞・雑誌が死ぬ前に』。仔細はこちら。