企業としての効率化を求め
るなら仕方ないのかも知れないが、一般企業もホールディングカンパニーの方式が一般化して、現場の感覚を知らない人が数字だけ見て経営やるなんて、この不確かな時代に有効なんだろうかね。
小: まったくそのとおり。しかし、制作能力が高くとも下請けは大変です。
地デジ化のために機材への先行投資がかさんでいるにもかかわらず、昨今の大不況で納品物への対価が削られています。21世紀の「
蟹工船」はテレビ局の下請けを担うプロダクションではないでしょうか。
橘: 局の下請けというと『発掘!あるある大事典(通称:あるある)』の捏造事件を思い出すな。あの事件はひどいもので、末端の下請けである「アジト」という会社にすべての責任を押しつけてしまった。
視聴者からすれば、出演者である堺正章や志村けんだって同罪だと思うわけだが、なぜか、局は、出演者にご迷惑おかけしました、と言って謝ったり別の番組を斡旋したりした。
小: タレントは仕方ないんじゃないですか? 台本渡されるだけだから。その台本のファクトチェックまで必要だとしたら、タレント事務所も調査報道みたいにリサーチャーか、ファクトチェッカーを雇わなきゃ。
CMの広告主について素性や社会的評価を洗ったほうがいいと思うけれど、出演する番組すべてとなるとキツいでしょうねえ。
橘: 昔、「嘘はつけません」と言って泣きながらテレビを去ったアイドルがいた。操り人形みたいなタレントやって、何を満足するのか、わたしにゃ、分からん。
小: 日本の場合、芸能プロダクションの力が強力過ぎですよ。「一日署長」とかで警察とも密接だし、知名度を利用して政治家にも貸しをつくれます。
芸能人の命運の幾ばくかは所属プロの力に依るところが大きいでしょう。だから、操られつつ渡世せざるを得ないけれど、島田紳助ほどにの存在になればまた別でしょうね。
橘: 『あるある』の話のひどいところは、スポンサーを「被害者」みたいにマスコミが扱ったことだよ。普通に考えれば、番組の最高責任者は局ではなくて、その資金を出したスポンサーにあると思うんだよね。
マスコミが犯したトラブルだから、どのマスコミも本質的な問題としてとりあげなかったがね。あの事件が起きて、アジトはマツモトキヨシの店内映像の仕事とかもしていたのに取り上げられて、かわいそうに、結局倒産してしまった。
スポンサー企業のコンプライアンスを含めて、テレビ番組の責任者は誰なのか、はっきりさせておく必要があるんじゃないかな。
小: たしかに正論ですが、スポンサーにまで責が及ぶとなると、どこもスポンサーにならなくなると思います。それに著作権は局側にあるわけですから、瑕疵(かし)についての契約書を交わしてるはずですよ。内容に非があった場合、責を負うのは局ですよ、とかね。
そんな局に対して、下請け側は一方的に不利な契約書でも締結せざるをえない。当然、損害賠償請求も含まれているでしょう。
その意味で、この業界は下請け保護のセーフティネットがない。現代の『あゝ野麦峠』や『女工哀史』ですよ。さらに工程が分散化しすぎて、だれもが無責任になっている。
それから私見ですが、メディアは良い意味でやくざなモノづくり産業で、もともとコンプライアンスなんて無縁でしょう(笑)。なのに、上場してしまっている点で大きく自己矛盾していると思います。
橘: 企業だって、今の馬鹿馬鹿しい番組作りに、うんざりしてるはず。ほとんど、狭い範囲のコミュニティの人間が、カラオケ大会やってるような状況だろう?
それを直すには、旦那であるスポンサーの側にも責任感持ってもらいたいな。もっとも、企業文化が未熟な段階で、そんなこと言うと、企業のお手盛り番組ばっかりになってしまうかな(笑)
小: まあ、たしかにそうですね。有料視聴課金は制作者の夢だと思いますが、ウェブと一緒で今さら難しいでしょうし。有料販売しているはずの新聞・雑誌ですら、このご時世に広告入れてくれるようなクライアントを失うような批判は困難でしょうからね。だから、ワイドショーにしても弱小芸能プロの芸人ばかり叩き、大手芸能プロの御用レポーターが跋扈する...。
橘: 性同一障害の問題から派遣や婚活まで、とんなテーマでもドラマにしてしまうテレビ局が、唯一、さわれなかったテーマがある。それは交通事故で悲惨な目にあった家族の物語なんだよね。
戦後社会のなかで自動車事故は、もっとも身近な死の問題であったにもかかわらず、巨大なスポンサーに遠慮して、ドラマにはできなかったんだと思う。別に、そういうジャーナリスト感覚の欠如を責めているわけではなくて、テレビとはそういうものだということを、みんな自覚して付き合うべきなんだと思うな。
小: メディア・リテラシーですね。わたしが個人的に許せないのは、番組とかで霊能者に「ほら、そこに霊が来ています」と言っているやつです。アレ、小学生とか信じていますよ。背後霊とかいうけれど、日本の人口は江戸時代で三千万人くらい。だから、霊も掛け持ちしたり、メダカとか雀とかの霊も総動員させないと1億人以上いる現代人に取り憑く暇がないのですが、どういうメカニズムなんだよ。説明しろ(笑)!
橘: まぁまぁ(笑)、バランス感覚が一番、大事だね。メディア問題も、バランスとっていこうぜ!
小: 漫談を標榜しながら、どっちもボケたりツッコミをしないという、バランスの悪さは問題です(笑)。
橘: まあ、放送の世界にも素晴らしい人がたくさんいたんだ。日本の放送業界を作った人はたくさんいるけど、僕が大好きだった、故・小谷正一さんが生きていたら、もっと放送と通信の融合について、大胆な動きをしてくれたはずだと思う。
小谷さんについては、インターネットで検索してもたいした情報は出てこないけど、戦後メディアのすべての土台を作った人だと言っていい。このあいだホイチョイ(・プロダクションズ)の馬場(康夫)さんが、小谷さんについて触れた本を出したけど、僕の友人が、今、資料を集めている。
小: これですね。
「エンタメ」の夜明け ディズニーランドが日本に来た橘: そうそう、とっても素敵なじいさまだった。本当に大事なことは、まだまだインターネットの外にあるんだな。僕も70年代から80年代にかけては、放送批評懇談会や民放連の連中といろいろ遊んでいたので、局の連中とも付き合いがあったけど、90年になって、全く疎遠になった。
僕が離れたのか、局の人種が変わったのか、もうすこし局の人たちも、身内でパーティばっかりやってないで、付き合う領域を広げていくべきだと思う。
小: 身内でパーティーばっかりやってるの(笑)?
橘: いや単なる飲み会。「やらせ」の問題でいうと、僕は放送映像というのは、演出が必要だと思うので、それ自体をとやかく言うつもりはない。問題は、演出しているということを自覚してやっているか、ということだな。詐欺師が詐欺に酔ってはいけない(笑)。
小: すごい詐欺師は自分が詐欺をはたらいていると思っていません。まず、自分を詐欺にかけています(笑)。
橘: いや、それは二流だな。本当の詐欺師というのは、バレたときに、笑ってすませられる奴(笑)。僕らも、いろんな詐欺師を見てきたよな。まぁ、僕らが詐欺師といえば詐欺師かも知れないし。
小: おおっ、問題発言だ(笑)。ところで、通信と放送の融合の話には今回も至りませんでしたねえ。次回こそやりましょうよ、それこそ詐欺になる(苦笑)。
芸能プロの所属タレントは英語にするとクライアントなんですよねー。つまり芸能プロというのは代理人で、その顧客だからクライアント。本来タレントは「お客さま」なんです。神様だw ところが日本では未だにプロダクションが角兵衛獅子の親方だ。
>メダカとか雀とかの霊も総動員させないと1億人以上いる現代人に取り憑く暇がない。説明しろ。
ってほんと同感! ああいうのを「まあまあそいうものだから」って言ってちゃダメ。振り込め詐欺被害養成してるようなもんです。
そのノリで引き続きツッコミお願いします~。橘川はボケのほうがいいかなーw